こんにちは!メディカルシステム課の柳瀬です。
「調理スタッフの確保が難しい」「厨房が老朽化している」「衛生管理を強化したい」――近年、病院給食の現場でよく聞くお悩みです。
人手不足、コスト増、衛生対応など、持続可能な給食運営の課題は尽きません。
その解決策として、セントラルキッチン(CK)の導入を検討する医療機関が増えています。
本記事では、セントラルキッチンの基本から運用方法の選び方、導入事例までをわかりやすくご紹介します。
自院に合った運営を考えるヒントとして、ぜひ最後までご覧ください!

セントラルキッチン(CK)とは、食事を提供する各施設で調理を行わず、一つの拠点で大量かつ安定的に調理を行い、複数の施設に配送する調理施設です。
かつての病院給食は、病院内で調理を行う事と義務付けられており、1996年に 医療法施行規則の改正により病院等の施設において院外・施設外で調理した食事を提供することが認可されるようになりました。
現在では、医療法人や社会福祉法人、給食会社、食品メーカーなど100か所を超えるCKが全国に整備され、病院や介護施設への調理済み食の供給を日々行っています。¹

こうした背景から、セントラルキッチンは今や、医療・福祉現場における給食運営のスタンダードとして定着しつつあります。
¹)2019年2月 一般社団法人日本医療福祉セントラルキッチン協会、医療・福祉施設へ食事配送するセントラルキッチンを対象とする「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の手引書: https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000487116.pdf
セントラルキッチンの主なメリット
メリット項目 | 内容 |
---|---|
人手不足の解消 | 調理スタッフを一か所に集約できるため、各施設での人員確保が不要に。 全体の人材効率が向上し、人手不足の改善につながります。 |
コストの最適化 | 食材の一括仕入れ、設備投資の集中、人件費削減などのスケールメリットが生まれます。 CK側で調理を行うことで、現場の人件費を大幅に削減可能です。 |
作業効率の改善 | 調理・仕込み・洗浄などの工程を一元化し、作業標準化・設備活用が進みます。 食数管理や配送もCKで対応することで、現場の負担を軽減できます。 |
衛生管理の一元化 | HACCP対応の衛生管理をCKで集中実施。 食中毒リスクの低減、監査対応の効率化が可能です。 |
品質の安定 | 一括調理により味や盛り付けのばらつきを抑え、一定の品質を維持。 利用者の満足度向上にもつながります。 |
一方で、注意すべきデメリットも
- 初期投資が高額: 大規模な厨房設備や配送体制の整備には一定のコストがかかります。
- 柔軟性の制限: メニューの個別対応や緊急の食事対応が難しいケースもあり、運用には慎重な設計が求められます。
このように、セントラルキッチンは病院給食の現場における課題解決の有力な選択肢となり得ますが、導入にあたっては各施設の特性を十分に考慮した上で、適切な運用方式を選ぶ必要があります。
詳細については、当社のセントラルキッチン紹介ページもぜひご覧ください。
Step1|配送先(SK)の特性を把握する
まずは、給食を届ける施設側(SK:サテライトキッチン)の状況を整理しましょう。
対象となる病院や施設がどのような特性を持っているのかを把握することが、セントラルキッチン設計の出発点になります。
- 急性期病院、リハビリテーション病院、慢性期病院などの種類
- 提供している食数(1日あたりの食事数)
- 所在地・距離(CKからの配送範囲)
- 対応が必要な食事形態(常食・軟菜食・きざみ食など)
複数施設がある場合は、それぞれのニーズを整理し、共通点と個別対応が必要なポイントを見極めましょう。
Step2|配送方式を選定する
次に、どのように食事を配送するかを検討します。配送方式は大きく4つあり、それぞれメリット・デメリットがあります。選択によってセントラルキッチンの規模や設備、必要な人員も変わってくるため、非常に重要なポイントです。
配送方式 | 概要 | 主なメリット | 主な注意点 |
---|---|---|---|
ホテルパン配送 | 加熱・冷却後の料理をホテルパンに入れたまま、施設別に仕分けしてカートで配送。 | CK作業・スペースを省略できる | トラック積載効率が低い/SK側の作業負担が大きい。 |
パック配送 | 調理後に急冷・真空包装し、袋(パック)状態で配送。ラベルで内容を表示。 | 衛生的で保存性が高く、外販や販路拡大がしやすい。 | 包装や表示の手間がかかる。 |
再加熱カート配送 | CKでトレイメイクまで行い、カートにセットした状態で配送。SKで再加熱して提供。 | 現地で再加熱するだけで提供可能/現場作業が最小限。 | カート設備の初期コストが高く、CK側の工程が複雑。 |

導入コストや配送距離、提供時間帯などの条件を踏まえて、最適な方式を選びましょう。
Step3|セントラルキッチンの規模を設計する
配送方式が決まったら、次はセントラルキッチンの設計です。
提供先の食数や必要な食事形態、調理工程に応じて、以下のような項目を検討・算出していきます。
- 生産能力(1日に必要な食数の処理能力)
- 必要な厨房機器・スペース
- 調理・仕込み・洗浄・事務などの人員配置
- 配送スケジュールと動線
計画調理の場合は、一番製造量が多くなる日を基準に計画します。
セントラルキッチン化の要となるのは、献立づくりです。
準備期間中にテストキッチンを設けて、レシピ・献立開発、作業マニュアル作り等を行う事をお勧めします。
- 院内や施設内の一部にテストキッチンを設け、クックチル・ニュークックチルレシピの開発を行う
- レシピ開発には、食材コストの計算や仕入れ先との交渉・調整も含まれるため、献立づくりの段階からCK計画の黒字化を見据える
- 作業工程をマニュアル化することで、稼働前のトレーニングがスムーズに行える

限られた施設から試してみて、柔軟に調整していくことで無理のない導入が可能になります。
1976年に総菜弁当の製造からスタートし、現在、病院や介護施設向けに安全で治療効果のある食事を提供しています。
2020年7月に新設した工場では、HACCPに基づいた衛生管理のもと、嚥下調整食や治療食など医療福祉の分野で安全性のある食事を提供するセントラルキッチンとして展開しています。
そんなお悩みを抱える病院給食の現場は少なくありません。
セントラルキッチンは、こうした課題をまとめて解決できる手段のひとつです。
ただし、すべての施設に同じ形が当てはまるわけではありません。
規模や運営方針に合わせて、最適な仕組みを見極めていくことが大切です。
導入にあたっては、病院給食の現場に詳しい当社スタッフがしっかりサポートいたします。
どうぞお気軽にご相談ください!
