EXPO2025大阪万博
「トルクメニスタン館」体験レポート
~五感で感じる『循環と生命』~

2025年の大阪・関西万博では、世界中から個性あふれるパビリオンが集まり、それぞれが自国の文化や技術、未来への展望を紹介しています。
その中で、トルクメニスタン館は独自性の強い建築と演出により、ひときわ目を引く存在でした。
本レポートでは、実際に現地を訪れて感じた印象や展示内容についてご紹介します。
来場者の視線を惹きつける、独特な外観
パビリオンの外観は、丸みを帯びた三角形の形状で構成されており、会場内でも一目でわかる独特なデザインでした。
この形状は、「循環」や「生命」といったテーマを象徴的に表現していると説明されており、デザインとメッセージが一体化した構造になっています。

建物の側面には大型ディスプレイが設置されており、トルクメニスタンを象徴する動物であるラクダやアラバイ犬の映像が常時再生されています。最新の映像演出とは異なり、素朴で親しみやすい印象を与えていました。
夜間にはライトアップが行われ、建物全体が柔らかく光り、通りがかる来場者の目を引いていました。

入口から感じる国家の威厳
館内に入ると、まず真正面にトルクメニスタンの現大統領の大きな写真が掲げられています。
写真の両脇には映像設備が設置されており、訪れる人の目線を誘導するような設計も工夫されていました。

国際的なイベントの場において、こうした政治的なシンボルを正面に配置するの
は珍しく、強い印象を残す演出となっていました。
巨大スクリーンで知る、トルクメニスタン
最初のメイン展示は、円形に近い広い空間での映像体験です。来場者は床に座り、360度にわたる巨大スクリーンに囲まれながら、トルクメニスタンの自然や文化を紹介する映像を鑑賞します。
黄金に輝く毛並みで知られるアハルテケ種の馬が草原を駆け抜ける場面や、国犬として、国民的な誇りの象徴であるアラバイ犬が登場するシーンは特に印象的で、同国の象徴的存在として強調されていました。また、伝統的な模様の絨毯や工芸品が映像に組み込まれており、トルクメニスタンが大切にしている文化的価値が伝わってきました。

このような360度の没入型映像は他のパビリオンでも見かけますが、空間全体を使って視覚的に包み込む規模感は珍しく、「その場にいるような体験」ができる点がこのパビリオンの大きな魅力です。
トルクメニスタンの伝統工芸と文化の宝庫
映像体験のあとは、伝統的な文化や産業の紹介ゾーンに進みます。
まず目に入るのが、アラバイ犬の柄があしらわれた大きな絨毯です。アラバイ犬は、トルクメニスタンで守護者とされる存在であり、国家の象徴でもあるアハルテケ種の馬と並んで非常に重要な動物です。絨毯に堂々と描かれたその姿からは、文化的な誇りと敬意が強く伝わってきました。

2階の展示室には、トルクメニスタンの伝統工芸品である絨毯、装飾品、工芸品などが並んでおり、色彩や模様の細かさが目を引きました。来場者の中には、細部を写真に収める人も多く見られました。

また、石油資源国らしく、石油から作られる合皮やプラスチック製品、さらには燃料やガソリンのサンプルも展示されており、文化と産業の両面から国の姿を伝えようとしているのが印象的でした。
さらに、展示棚には日本語を含む多言語の現地教科書が並べられ、教育や国際交流にも力を入れている様子がうかがえます。
3階レストランから眺めるドローンショー
展示を終えて上階に進むと、3階にはレストランが設けられています。内装は金と赤を基調にデザインされており、伝統楽器や壺、絨毯などがディスプレイとして配置されています。

テラス席からは会場全体を一望でき、万博のドローンショーも鑑賞することができます。筆者が訪れた時間帯に、夜のドローンショーが行われており、空中に花や木、蝶などが光で描かれていく演出を鑑賞することができました。

このように、食事を楽しみながらイベントも満喫できる空間は、滞在時間を自然と延ばす要素になっており、来場者の満足度を高める工夫が感じられました。
トルクメニスタンの今を多角的に体験できる空間
トルクメニスタン館の展示は、視覚的な演出を軸に構成されており、建物の形状から映像、展示物に至るまで、すべてが統一感のあるメッセージを持っていました。
展示パネルや解説文は控えめでしたが、その分、空間全体のデザインや映像体験が情報を補完しており、来場者が能動的に「見る」「感じる」ことに重点を置いた構成になっていたように思います。
国の文化や経済、暮らしを紹介しながらも、過度に情報を詰め込むのではなく、印象で伝えるスタイルが徹底されており、万博らしい体験型の展示空間でした。
もし万博を訪れる機会があれば、ぜひトルクメニスタン館に足を運んでみてはいかがでしょうか。