EXPO2025大阪万博
「日本館」体験レポート
〜いのちと、いのちの、あいだに〜

2025年の大阪・関西万博には、世界各国のパビリオンが集まり、それぞれが「未来の社会」や「地球との共生」についてのビジョンを発信しています。なかでも注目度が高いのが、開催国である日本が出展する「日本館」です。

今回のテーマは「いのちと、いのちの、あいだに」。命の始まりと終わりを切り離すのではなく、すべてが循環の中にあるという新しい価値観を提示しています。

本レポートでは、実際に日本館を訪れて体験した展示内容を紹介します。

木材を活かした円形の展示空間

館内に入ると、再生可能な国産木材を積層してつくられた「CLTパネル」で構成された円形の空間が広がっています。木の香りと自然光を活かした照明によって、落ち着いた雰囲気がつくられていました。

空間の中心には囲炉裏を模したスペースがあり、人が集まり会話する場として設計されています。囲炉裏そのものに火は灯っていませんが、空間の中心として来場者の動線を自然に誘導していました。

天井や壁には、自然や食、再生といった要素をテーマにした映像が投影されており、導入として展示内容への関心を高める役割を担っていました。

3つのゾーンで構成された展示エリア

日本館の展示エリアは「プラント」「ファーム」「ファクトリー」の3つのゾーンで構成されています。いずれも「命の循環」を軸とした内容で、視覚的にわかりやすい構成となっていました。

プラント(Plant)

最初のゾーンでは、生ごみや食品廃棄物を分解し、バイオガスとして再利用する仕組みが紹介されています。

実際に万博会場で発生した生ごみが使われており、展示ではその処理過程を模型と映像で確認できました。発生したエネルギーの一部は、日本館の電力として活用されています。

ファーム(Farm)

次のゾーンでは、再生されたエネルギーが新たな命や資源として活用される例が展示されています。ここでは、バイオマスを使った素材、食品廃棄物から生成された新しい資源、未来の農業技術などが紹介されていました。

科学技術の応用という側面が強いものの、展示全体は人間の暮らしと密接に関連づけられています。

ファクトリー(Factory)

最後のエリアでは、回収された資源が家具や建材などの製品として再生される過程が紹介されていました。中には、再生素材で作られた食器など、実際に手に取って触れられる展示も用意されており、来場者が質感や重さを体験できる工夫がなされています。

日本文化と体験設計に見る「持続可能性」と「主体性」

日本館では、建築や展示を通じて、日本の伝統的な価値観や自然観が随所に取り入れられていました。木材を活用した構造や空間の設計には、日本家屋に通じる落ち着きと調和が感じられます。

展示内容にも、各地域の文化や産業を再評価する取り組みが含まれていました。地方の農産物を使った新素材の開発や、工芸品の循環利用といった事例紹介からもまた、伝統と技術の共存を実現する姿勢がうかがえます。

展示の順路は固定されておらず、来場者が自由にゾーンを行き来できる構成になっていました。それぞれが自分の興味に応じて体験を深められる設計です。また、展示エリアには複数のスタッフが配置されており、必要に応じて展示内容について丁寧に説明を行っていました。

出口付近には、来場者がメッセージを記入できる「絵馬カード」コーナーも設置されていました。ここで書かれた内容は、同会場内の施設「EARTH MART」で配布されている「万博漬け(梅干し)」とともに、今後25年間保管されるとのことです。

日本館が伝えたかった、未来へのメッセージ

日本館は、最新技術を前面に押し出すパビリオンとは異なり、来場者が自ら問いを見つけ、考えを深めていけるような展示設計がなされていました。視覚的・触覚的な展示に加え、空間全体の構成や導線も含めて、「循環」や「共生」というテーマが一貫して伝わってきます。

過去の文化や知恵と、未来の技術や暮らしがどうつながるのかを示す展示として、日本館は非常に完成度の高いパビリオンでした。

大阪・関西万博を訪れる際には、ぜひ足を運んでみることをおすすめします。

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