EXPO2025大阪万博
「EARTH MART」体験レポート
~食の未来に出会う場所~

大阪・関西万博では、世界中の知恵と技術が集結した多彩なパビリオンが並び、未来の社会や暮らしを体感できる展示が数多く並んでいます。

その中でもひときわ注目を集めているのが、放送作家・小山薫堂さんがプロデューサーを務めるシグネチャーパビリオン「EARTH MART(アースマート)」です。

EARTH MARTのテーマは「食」。命への感謝やサステナビリティを軸に、未来の食文化をさまざまな角度から紹介しています。

本レポートでは、実際に訪問した際の体験をもとに、館内の展示内容を紹介していきます。

展示で学ぶ「知る・触れる・考える」

パビリオンに入場すると、まず導入映像が流れていました。この映像では、日常の食卓や農作業の様子、そして「いただきます」という言葉に込められた、命への感謝の思いが映し出されていました。

映像ゾーンを抜けると、展示エリアに入ります。インフォグラフィックや模型を通じて、さまざまな情報に触れられる空間です。

特に印象に残ったのは、来場者が気になる食材を「計量器」に乗せると、その食材に関するデータや背景情報がディスプレイに表示される体験型の展示です。例えば、魚を模したオブジェを置くと、漁獲量や調理法、環境への影響などの情報がわかりやすく映し出されました。おそらくICチップ入りのタグを活用した仕組みだと思われますが、テクノロジーと情報の伝達がうまく融合しており、子どもでも楽しめる内容でした。

また、説明パネルのフォントや文字の大きさ、行間、レイアウトにも工夫が凝らされていて、とても読みやすかったのが印象的でした。高齢の方でも安心して情報を得られる配慮がなされており、パビリオン全体として、すべての人が学べる場所という姿勢が感じられました。

食の未来をつくる最前線 「凍結粉砕技術」と「再生米」

展示の中盤では、食品ロスの削減につながる技術が紹介されていました。

「-196℃凍結粉砕技術」は、皮付きの果物や野菜の茎、卵の殻、ワインの搾りかすといった未利用食材を液体窒素で凍結・粉砕し、パウダー化する技術です。バナナの皮や卵の殻、ワインの搾りかすなど、これまで廃棄されていたものが再び食材として利用できるようになるそうです。

さらに、そのパウダーを活用した「再生米(さいせいまい)」の展示もありました。再生米とは、割れ米にパウダーを混ぜて再成形したもの。ここでは、「サラダ米」「トマト米」「パエリア米」など、さまざまな種類が紹介されていました。

見た目もカラフルで、炊くだけで食べられる利便性の高い商品もあり、将来の主食のひとつとしての可能性を感じさせる内容でした。

新たな調理のかたち「JETCOOK」と「録食」

次のエリアでは、調理のデジタル化に関する技術が紹介されています。

「JETCOOK」は、3Dプリンターのように食材を積層して料理を形づくる装置です。ペースト状の食材をノズルから押し出し、美しい見た目の料理をつくります。高齢者向けのやわらか食や、栄養調整が必要な医療食としての応用も見込まれています。

もう一つの技術「録食(ろくしょく)」は、調理の工程を数値で記録する試みです。材料の量、加熱時間、温度といった情報を保存することで、同じ味を再現できるだけでなく、レシピの継承や料理文化の保存にも役立つとされています。

これらの展示では、味覚や技術の再現にとどまらず、未来の食を「記録する」ことへの意識が感じられました。

体験型演出で伝える「食の循環」

展示の終盤には、直径数メートルの円形テーブルと、その上に映し出されるプロジェクションマッピング演出が用意されていました。食材の成長から加工、消費、再生までの流れが映像で描かれ、食をめぐる循環の仕組みを視覚的に体感できます。

来場者が「守りたい味」や「思い出の料理」などを自由に書いて残せる「絵馬コーナー」も設けられており、誰もが食に対する思いを共有できる仕組みとなっていました。

出口付近では「万博漬け引換券」が来場者に配られます。これは、会場で漬けられた梅干しを、25年後の2050年に引き換えることができるというものです。

「食」を見つめ直す機会に

EARTH MARTでは、単に未来的な技術を紹介するだけでなく、「食べること」の意味や命との向き合い方について、多角的に考える機会が設けられていました。

便利さや効率を追求する一方で、私たちがどのように食と向き合い、次の世代に伝えていくかを見直すきっかけになる展示です。

大阪・関西万博を訪れる際には、EARTH MARTにもぜひ足を運んでみてください。

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