EXPO2025大阪万博
「BLUE OCEAN DOME」体験レポート
~海の命と向き合う、没入型パビリオンの全貌~

2025年の大阪・関西万博では、世界各国や企業が未来への提案を詰め込んださまざまなパビリオンを出展しています。

その中で特に印象深かったのが、水や海をテーマにした民間パビリオン「BLUE OCEAN DOME」です。テーマは「海の蘇生」。このパビリオンでは、海と水に関する展示を通して、地球や宇宙、生命、環境といった広い視点から私たちの暮らしを見つめ直し、一人ひとりの環境意識を呼び起こすことを目指しています。

今回は、実際に現地を訪れて体験した展示の様子をご紹介します。

水に浮かぶような外観

BLUE OCEAN DOMEは、3つの白い半球型の建物で構成されています。

外観は水面に浮かんでいるかのような設計で、建物全体が水に囲まれ、その様子が水面に映り込むことで球体のような立体感が生まれていました。

写真映えする外観として人気を集める一方で、建物そのものにも環境への配慮が施されており、展示だけでなく建築そのものが持続可能性を体現している点が印象的でした。

【ドームA】水の循環が見せてくれる、動くアート

最初のドームでは、「水の循環」を表現したアート空間が広がっていました。

斜面の上を転がる水滴が、撥水加工された装置を伝いながら流れ、最後に鹿威し(ししおどし)のような構造にたどり着き、一気に水が落ちる仕組みになっています。水の流れそのものが動くアート作品となっており、子どもから大人まで足を止めて見入っていました。

展示装置には撥水性の特殊塗料が使用されており、手で触れることはできませんが、その分、水の動きがくっきりと浮かび上がっていました。

先に進むと、徐々に照明が暗くなりました。壁にはプラスチックの生産量や海洋流出量など、環境に関するデータがイラスト付きで紹介されています。

水の美しさを感じた直後に、その水を脅かす現実が提示される構成により、来場者の意識を自然と問題提起の方向へと導いているように感じられました。

【ドームB】巨大スクリーンに映し出される、命の海の危機

次に進んだドームBでは、完全に暗転した空間に直径数メートルの球形スクリーンが設置されていました。来場者は椅子に座って映像を鑑賞します。

上映される映像は、音楽と映像のみで構成されており、ナレーションや字幕などの説明は一切ありません。

映像の前半では、透明度の高い海や泳ぐ魚など、美しい海の様子が映し出されますが、次第にプラスチックごみが登場し、最終的には海洋生物がごみに囲まれる様子に変わっていきます。

視覚的に訴えかける構成で、海洋ごみの深刻さが強く印象に残りました。

映像を見終えたあと、出口に続く通路には洗剤ボトルやおもちゃ、ストローなどの身近な製品が展示されており、それぞれに「これは本当に必要か?」といった問いかけが添えられていました。日常生活と海洋ごみの関係を意識させる、よく考えられた導線設計です。

【ドームC】課題と希望が交差する、学びと循環の空間

最後の「ドームC」は、海の未来に向けた知恵と取り組みを紹介する場所になっていました。ここでは、環境に配慮した商品や、廃棄物をアップサイクルした製品などが展示・販売されていて、他の2つのドームとは少し雰囲気が異なっています。

中でも印象に残っているのが、日本の対馬で実際に起きている海洋プラスチック問題の紹介です。

説明によると、対馬には年間で25メートルプール125杯分ものごみが漂着し、その処理に約3億円もの費用がかかっているそうです。それでも、回収できるのは全体の3割ほど。しかも、流れ着くごみの約7割は海外由来とのことでした。

こうした現状に対し、地域住民がクラウドファンディングを立ち上げたり、寄付と連動したアップサイクル商品の開発に取り組むなど、具体的な解決策の紹介も行われていました。

また、有料ですが「超純水(不純物をほとんど含まないとてもきれいな水)」の試飲体験もあり、水の価値について改めて考えるきっかけとなる内容になっていました。

建物そのものが語りかける、持続可能性というメッセージ

BLUE OCEAN DOMEの特徴のひとつは、建物自体にも強いメッセージが込められていることです。各ドームはそれぞれ異なる素材でつくられており、いずれも環境への負荷を抑えたものが選ばれています。

ドームAは竹の集成材でできており、軽くて加工しやすいだけでなく、木材のような温かみも感じられました。

ドームBはCFRPという炭素繊維強化プラスチックで作られており、地面に杭を打たずに建てられるうえ、撤去の際に廃棄物が出ない設計になっているそうです。

そしてドームCは、建築家・坂茂氏でも知られる、再生紙の紙管(厚紙を筒状にしたもの)によって構成されています。

どの素材も、軽さや再利用性に優れ、建物自体が持続可能性を体現していました。

また、この建物は会期終了後、モルディブの海洋リゾートに移設され、再利用される予定とのことです。展示のテーマである「循環」を建築のあり方そのもので体現している点は、万博の理念にも通じています。

心に残った問いかけと、帰り道に考えたこと

BLUE OCEAN DOMEは、視覚的・感覚的な演出によって、環境問題をわかりやすく、かつ深く伝えてくれるパビリオンでした。

落ち着いた演出ながら、来場者一人ひとりに「自分に何ができるのか?」と問いかけ、「考えること」を目的とした空間であると強く感じました。

見て終わるのではなく、「帰り道に何を考えるか」を意識した設計が徹底されており、多くの来場者にとって意味のある時間になると思われます。

万博を訪れる際は、ぜひこのパビリオンにも立ち寄ってみてください。

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