中西製作所では海外の学校給食の様子や、世界に普及し始めている日本式学校給食の状況について調査を行っています。
第7弾となる今回はブラジルのご紹介です。
ブラジルは南米最大の国で、多様な人種と文化が交わる国として知られています。あまり知られていませんが、ブラジルは世界一日系人が住んでいる国です。
ブラジルの主食は米と豆。「フェイジョン」と呼ばれる煮豆とご飯の組み合わせが国民食とされており、給食にもその特徴が表れています。
ぜひ最後までご覧ください。
第7弾となる今回はブラジルのご紹介です。
ブラジルは南米最大の国で、多様な人種と文化が交わる国として知られています。あまり知られていませんが、ブラジルは世界一日系人が住んでいる国です。
ブラジルの主食は米と豆。「フェイジョン」と呼ばれる煮豆とご飯の組み合わせが国民食とされており、給食にもその特徴が表れています。
ぜひ最後までご覧ください。

目次
1. ブラジルの医療・教育・給食~驚きの完全無償福祉制度~
2.「全国民の権利」としての食事
3. ブラジルの学校給食~徹底された安全・衛生・効率管理~
4. 地域で異なる学校給食の特色~多様性と課題のコントラスト~
5. ブラジルの主食「米とフェイジョン」~食文化の中心にある家庭の味~
6. まとめ~
ブラジルの医療・教育・給食~驚きの完全無償福祉制度~
ブラジルは、医療・教育・学校給食といった基本的な福祉サービスが完全無償で提供されている、世界でも珍しい国のひとつです。
医療制度には「保険」という仕組みがなく、「統一保健医療システム(SUS)」が1988年から導入されています。この制度に登録された病院であれば、身分証さえあれば誰でも無料で診察や治療を受けることができます。国民の約75%が利用しており、発展途上国の中では非常に進んだ制度といえるでしょう。1)
教育についても、公立学校での初等教育から大学まで授業料はすべて無料。義務教育課程では学校給食も基本的に無償で提供されており、地域によっては数十円程度で温かい食事を提供する「格安食堂」が併設されているケースもあります。さらに、ホームレスや非正規労働者を対象にした格安レストランも存在するなど、生活弱者への食の支援が手厚いのが特徴です。
一方で、公立病院は診察の待ち時間が非常に長いことや、公立学校の教育水準が私立と大きく差があるなど、課題も指摘されています。それでも、誰もが基本的な医療や食事、教育にアクセスできる環境は、福祉先進国としての側面を示しているといえるでしょう。
医療制度には「保険」という仕組みがなく、「統一保健医療システム(SUS)」が1988年から導入されています。この制度に登録された病院であれば、身分証さえあれば誰でも無料で診察や治療を受けることができます。国民の約75%が利用しており、発展途上国の中では非常に進んだ制度といえるでしょう。1)
教育についても、公立学校での初等教育から大学まで授業料はすべて無料。義務教育課程では学校給食も基本的に無償で提供されており、地域によっては数十円程度で温かい食事を提供する「格安食堂」が併設されているケースもあります。さらに、ホームレスや非正規労働者を対象にした格安レストランも存在するなど、生活弱者への食の支援が手厚いのが特徴です。
一方で、公立病院は診察の待ち時間が非常に長いことや、公立学校の教育水準が私立と大きく差があるなど、課題も指摘されています。それでも、誰もが基本的な医療や食事、教育にアクセスできる環境は、福祉先進国としての側面を示しているといえるでしょう。
「全国民の権利」としての食事
ブラジルでは「食べること」が全国民の権利として、国の憲法によって明確に保障されています。この理念に基づき、公立学校に通うすべての児童・生徒に対して学校給食が完全無償で提供されているのが大きな特徴です。
この学校給食制度を支えているのが、1979年に制定された国家学校給食プログラムです。本制度は国の予算によって運営されており、2025年度の予算額は約57.15億レアル(日本円で約1,480億円)にも上ります。
この予算をもとに、年間200日、全国の約4,000万人の児童・生徒に給食が提供されており、世界的にもスケールの大きな給食制度です。また、子どもの栄養だけでなく、地域農業の振興や教育格差の是正といった複数の社会的役割を担っています。2)
この学校給食制度を支えているのが、1979年に制定された国家学校給食プログラムです。本制度は国の予算によって運営されており、2025年度の予算額は約57.15億レアル(日本円で約1,480億円)にも上ります。
この予算をもとに、年間200日、全国の約4,000万人の児童・生徒に給食が提供されており、世界的にもスケールの大きな給食制度です。また、子どもの栄養だけでなく、地域農業の振興や教育格差の是正といった複数の社会的役割を担っています。2)

ブラジルの学校給食~徹底された安全・衛生・効率管理~
食材管理
・保存食材(米・豆など)は年初と30日ごとに配送、生鮮品(野菜・卵・冷凍肉など)は週単位で納品。
・納品時にロット番号・消費期限・品質などを厳密に確認。不備があれば受け取り拒否可能。
・床置き禁止、厨房内の衛生ルールも徹底。
・納品時にロット番号・消費期限・品質などを厳密に確認。不備があれば受け取り拒否可能。
・床置き禁止、厨房内の衛生ルールも徹底。
在庫・調理管理
・在庫は毎日記録し、30日ごとに調整。学校間で食材の融通も可能。
・食数は日次で記録し、次回発注に活用。
・調理時の温度記録、サンプル保存(72時間)で食中毒対策も万全。
・食数は日次で記録し、次回発注に活用。
・調理時の温度記録、サンプル保存(72時間)で食中毒対策も万全。
運営体制
大きくは以下の3パターンに分かれます。
・ 州政府主導の中央集権型
・ 市や学校による地方分権型
・ 民間委託型(都市部に多く、清掃や人員確保まで委託)
給食は児童・生徒専用で、調理従事者の喫食は禁止されています。
全体として、ブラジルの給食制度は子どもの健康を守るために、制度・現場の両面で非常に厳格に運営されていることがわかりました。
・ 州政府主導の中央集権型
・ 市や学校による地方分権型
・ 民間委託型(都市部に多く、清掃や人員確保まで委託)
給食は児童・生徒専用で、調理従事者の喫食は禁止されています。
全体として、ブラジルの給食制度は子どもの健康を守るために、制度・現場の両面で非常に厳格に運営されていることがわかりました。
地域で異なる学校給食の特色~多様性と課題のコントラスト~
サンパウロ州~都市集中と民営化が進むモデル州~
ブラジル最大の人口と経済規模を誇るサンパウロ州では、都市部は州が直接管理し、地方部は市に委託といったハイブリッドな運営体制を採用しています。
州都では約9割の学校が民間企業に給食を委託しており、効率化とコスト管理を重視した都市型のモデルです。
日系人口の多さも特徴で、文化的背景の反映も見られます。
州都では約9割の学校が民間企業に給食を委託しており、効率化とコスト管理を重視した都市型のモデルです。
日系人口の多さも特徴で、文化的背景の反映も見られます。
ミナスジェライス州~広大な土地で支える地方分権型の工夫~
州の面積が広いため、多くの学校は地域監督機関と市による地方分権型で運営されています。
2017年には給食投資を倍増し、献立の多様化や栄養士雇用にも注力。都市部では栄養士の有資格者が多く、地方では人材確保が課題です。
2017年には給食投資を倍増し、献立の多様化や栄養士雇用にも注力。都市部では栄養士の有資格者が多く、地方では人材確保が課題です。
リオデジャネイロ州~格差社会の中で果たす栄養支援の役割~
都市近郊に低所得層が住まうファヴェーラという地域が広がるこの州では、コスト削減を目的に民間委託率が15%と全国トップです。
一方で、子どもの56%が給食を「1日で最も健康的な食事」として頼るなど、栄養格差の象徴的存在でもあります。近年は直営化にシフトする動きも見られます。
一方で、子どもの56%が給食を「1日で最も健康的な食事」として頼るなど、栄養格差の象徴的存在でもあります。近年は直営化にシフトする動きも見られます。
ブラジルの主食「米とフェイジョン」~食文化の中心にある家庭の味~
ブラジルの食卓に欠かせないのが、豆の煮込み「フェイジョン」。
日本でいうご飯と味噌汁のような存在であり、家庭の味を象徴する主食コンビです。
この組み合わせは、ヨーロッパ系、アフリカ系、日系など、どの家庭でも文化や背景を超えて共通するブラジル定番の食事です。
家庭料理はもちろん、公立学校の給食にもこの組み合わせが広く採用されており、米を使った献立には必ずフェイジョンがセットになっています。
栄養面でもバランスが良く、タンパク質・炭水化物・食物繊維が効率よく摂れるため、ブラジルの子どもたちの成長を支える栄養源としても重要な役割を担っています。
日本でいうご飯と味噌汁のような存在であり、家庭の味を象徴する主食コンビです。
この組み合わせは、ヨーロッパ系、アフリカ系、日系など、どの家庭でも文化や背景を超えて共通するブラジル定番の食事です。
家庭料理はもちろん、公立学校の給食にもこの組み合わせが広く採用されており、米を使った献立には必ずフェイジョンがセットになっています。
栄養面でもバランスが良く、タンパク質・炭水化物・食物繊維が効率よく摂れるため、ブラジルの子どもたちの成長を支える栄養源としても重要な役割を担っています。

まとめ
いかがでしたか?
ブラジルの学校給食は、単なる「食事の提供」を超え、子どもの健康と未来を守る社会全体の取り組みとして位置づけられ、学校給食が社会のインフラの一部であるという視点において、多くのヒントがありました。
栄養バランスへの配慮はもちろん、衛生・安全・公平性を徹底した管理体制、日々の調理現場の細やかな工夫に至るまで、一つひとつが制度としてしっかり機能していることに驚かされた方も多いのではないでしょうか。
学校給食は、単なる食事ではなく、子どもたちの健康と学びを支える「社会の土台」として、ブラジルでは確かに機能していました。 この記事は2025年6月時点の中西製作所による調査によって制作いたしました。
間違い等がございましたら修正いたしますので、ご連絡のほどよろしくお願いいたします。
【参考文献】
ブラジルの学校給食は、単なる「食事の提供」を超え、子どもの健康と未来を守る社会全体の取り組みとして位置づけられ、学校給食が社会のインフラの一部であるという視点において、多くのヒントがありました。
栄養バランスへの配慮はもちろん、衛生・安全・公平性を徹底した管理体制、日々の調理現場の細やかな工夫に至るまで、一つひとつが制度としてしっかり機能していることに驚かされた方も多いのではないでしょうか。
学校給食は、単なる食事ではなく、子どもたちの健康と学びを支える「社会の土台」として、ブラジルでは確かに機能していました。 この記事は2025年6月時点の中西製作所による調査によって制作いたしました。
間違い等がございましたら修正いたしますので、ご連絡のほどよろしくお願いいたします。
【参考文献】
1)JICA(国際協力機構)「事業事前評価表」, https://www2.jica.go.jp/ja/evaluation/pdf/2023_B1901_1_s.pdf(2025年7月28日最終アクセス)
2)WFP(国連世界食糧計画)「State of School Feeding Worldwide 2022」, https://publications.wfp.org/2022/state-of-school-feeding (2025年7月28日最終アクセス)