間違っているかも!?次亜塩素酸ナトリウムの使い方

次亜塩素酸ナトリウムの用途

食品製造現場においては機械設備、器具の消毒や野菜等の殺菌、ふきんや作業着の漂白に用いられます。
厚労省の大量調理施設衛生管理マニュアルでは、必要に応じて野菜果物の殺菌には200ppmで5分間100ppmでは10分間の浸漬をした後流水ですすぎ洗いをすることが明記されており、器具容器等の洗浄後の殺菌も同様の濃度で殺菌を行います。
また、ノロウイルスにも効果があり食中毒予防として毎日、人の手が触れる箇所(ドアノブ、手すり、スイッチ等)やトイレ清掃でも使用されます。

よくある誤解

  その1 希釈せずに原液のまま使った方が効果がありますよね? 

目的に応じた希釈倍率で希釈して使いましょう
逆に濃度が濃いとシンクや器具が腐食する可能性があります。
その2 使うごとに希釈していたら非効率なので、朝にまとめて希釈してもいいですか?

次亜塩素酸ナトリウムは自然分解し空気中に 酸素を放出します。この酸素が強力な酸化作用を示し殺菌に効果を発揮します。
したがって酸素が放出されると殺菌効果が落ちてしまうため、その都度希釈液を作りましょう
原液の保管時も蓋を開けっ放しにすると効力が落ちてしまうため必ず蓋は閉めましょう。また、紫外線によっても分解が促進されるため、日光の当たらない涼しい場所に保管しましょう。使用期限の切れたものは使わないようにしましょう。
容器に書かれた使用期限は未開封の場合です。開封後は期限内であってもなるべく早く使いきれるよう購入量も注意しましょう。


その3 機械設備や器具に汚れが付着した状態で希釈液に浸漬してもよいのですか?

食品残渣等の有機物汚れが残っていると殺菌効果は落ちるため、汚れはしっかり洗い流してから殺菌しましょう。
有機物汚れが多くの酸素を消費してしまい、機械設備や器具表面の殺菌力が低下します。


その4 お湯で洗うと汚れが落ちやすいのと一緒で、次亜塩素酸ナトリウムもお湯で希釈した方が効果が高いですか?

60℃以上のお湯では成分が分解されるため、水で希釈しましょう

その5 希釈液は何度も作るのが面倒なので繰り返し使っても良いですか?

汚れ(有機物)に触れると殺菌能力は低下します。繰り返し使う場合は有効な塩素濃度を測定(残留塩素試験紙(高濃度用)等)して、濃度が適正であるか確認してから使いましょう
 

実際に起きた労働災害事例

 ケース1 
トイレの洗浄中、ガスが発生し従業員が塩素ガス中毒で入院

 発生状況 
従業員Aはトイレ清掃作業の際、洗浄コーナーの棚に置かれていたトイレ清掃用洗剤が少なかったため、Aの使用しているバケツ(清掃セット)内にあった、同一ラベルが貼付され外見が同一の容器に移し替えた。
その際多量の泡と強い臭気が発生したため、直ちに内容物を流しに捨て、窓を開けて換気を行った。臭気が収まったためAはトイレ清掃を実施していたところ、胸が苦しくなりうずくまっていたところを同僚が発見し、病院で受診した結果塩素ガス中毒と診断され、2日間入院した。
 原因 
①同一容器・表示であることから内容が同一であると判断してしまい、洗剤を混合してしまったこと。
②容器内に表示内容と異なった洗剤を入れていたこと。
③酸性洗剤及び塩素系洗剤に対する危険性の認識が不足していたこと。
④安全衛生管理体制が確立されていなかったこと。
 対策 
①内容物の表示を徹底すること、及び使用容器には表示内容物の違う洗剤等は入れないこと。
②洗剤は、使いきりを原則とし、継ぎ足し等の行為を禁止することが望ましい。
③洗剤の特性・危険性を関係労働者に教育を図ると共に、周知徹底すること。
④安全衛生管理体制を確立すること。
 ケース2 
次亜塩素酸ナトリウムを加湿器に誤って投入したことによる中毒

 発生状況 
福祉施設内のエントランスホール及び談話室において、加湿器に誤って次亜塩素酸ナトリウムが補充されていたことにより、施設内に次亜塩素酸ナトリウムを含む水蒸気が飛散したため、入所者にお茶を提供していた作業者が吐き気や咳込み等の症状を発し、救急車で病院に搬送された。
加湿器に加えられた次亜塩素酸ナトリウムと酸性物質の反応による塩素ガスの発生によるものか、次亜塩素酸ナトリウム自身の皮膚や粘膜への刺激性によるものか、症状の原因は明確ではない。
加湿器へ本来補充する薬剤(次亜塩素酸水)と、次亜塩素酸ナトリウムの容器の外観が似ており、また近傍に置かれていたため、作業に不慣れな補充者(被災者ではない)が取り違えた。
 原因 
①薬品の使用方法についての情報共有が不足していたこと
②異臭がする際の対策が検討されていなかったこと
③容器の外観や名称が似ていたため、化学物質を取り違えたこと。
 対策 
①次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムのような、名称が似ているが異なる物質について、使用時の注意事項を明確に掲示し、手順書を作業者で共有して作業を行う
②外観や名称が似た化学物質の取り違えが起こらないように、収納場所を別にし、それぞれ目立つ場所にラベルを貼る。こぼれた薬品や時間経過によりラベルが色褪せた場合は速やかに貼りかえ、取り違えを防止する
③福祉施設や病院等の交代勤務のある職場では、特に注意して情報共有を行う。

最後に

今回は次亜塩素酸ナトリウムの取扱いについてご紹介しました。
安価で身近な消毒剤ですが取扱い方を間違えると命の危険も出てくるため、マニュアルの整備、周知徹底ができているかいま一度ご確認ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。